岩崎瓦工業
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1.京町屋の屋根
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特集1:「京町屋の屋根」
日本の風土を利用してつくられた屋根。
 京都を歩くと碁盤の目と例えられる「通り」に気付かれると思います。通りに沿って住宅が造られているので京町家はご存知の通り「うなぎの寝床」のような形をしています。屋根の瓦も横のならびに対して縦のならびが長い形をしている訳です。
 京町家は夏をすごし易く造られているため涼しく過ごす様々な工夫が見られます。ハシリニワ(土間)を一番奥の座敷庭までとおし風の通り道を作ったり、目隠しを兼ねた簾で涼んだり。瓦も夏や冬の外気から家を守る重要な断熱材であり、おくどさん(カマド)からの熱気や湿気を逃がす通気も担っています。そんな京町家の屋根について簡単にレポートします。
 
■ 京町家の屋根の形状
 京の町を歩くと一見瓦が目に付きますが、実際よく見られるのは軒や庇と塀瓦です。屋根全体が見られますのはお寺さんばかりでしょう。大屋根の瓦を見ようとすると、通りが狭いので、向かいの町家さんに背中がくっついてしまいます。京町家の屋根は起(む)くらせていますし、流れが長くなっているからなおさらです。農村部に行くと、瓦は全体が見えるので棟を高く積んだり鬼を大きくしたりしますが、京都では目に付く軒や塀でで見せ場を作ります。
 
■ 起り屋根
 屋根勾配を棟際では抜いて、軒際できつくした屋根です。屋根の上部では流れる雨水は少なく勾配が緩くても雨漏りには影響がありません。それから軒で勾配をきつくしていくことで増えた雨水を確実に流していく事ができます。屋根に重厚感を持たせるという意匠的なものですが、流れの長い屋根には流れる雨水の水量も多いので、流れる力をコントロールし樋で治めきるという効果も狙っているのではないかとも考えられます。狭い通りにはたくさん人が歩きますし昔の瓦師や大工さんはそこまで考えて造ったのではないでしょうか。
 
■ 錘馗さん
 錘馗さんは京都の町家の庇の上に家の魔除けとして乗っています。錘馗像なのにはこんな所以があります。
 時は江戸。京は三条の鴨川のほとりに大きな薬屋さんがありました。その薬屋さんは店を新しくしましたときに大屋根に大きな鬼面の鬼瓦を据えました。家が完成するや否や向かいの家の女房が原因不明の病気になってしまいました。ありとあらゆる医者や薬を試させたがいっこうに回復しません。亭主は困り果て、名高い祈祷師に見てもらいましたところ向かいの薬屋さんの鬼面鬼瓦が原因だと言います。亭主はすぐに鬼を下ろしてもらえないだろうかと頼みに行きましたところ薬屋の主人は折角建てたのでと嫌がったのです。祈祷師はそれではと、中国で鬼より強いとされる錘馗を庇に乗せなさいと勧めました。亭主はすぐさま伏見の瓦屋に錘馗さんを作らせ庇に乗せたところ女房はたちまち回復したそうです。それ以来、家を守って悪いものを寄せ付けない錘馗さんとなりました。京都に行ったら町家さんの庇の上を見て見ましょう。きっと面白い錘馗さんが見つかります。
   
■ 一文字軒 ■ 八十枚、百枚版(小瓦)
 軒瓦を一文字という一枚板の様な形状にすることで庇をスッキリと軽く見せています。
庇も同様に一文字を使います。
 京町家の庇は1m程しかないので、大屋根と同じ瓦を使いますとぶかぶかな感じのものになってしまいます。そこで庇には大屋根よりふた廻りほど小さい瓦を使います。大屋根の瓦は例えば六四版、庇の瓦は八十枚版。六四版というのは一坪あたりに六十四枚、八十枚版というのは一坪あたりに八十枚葺けるという瓦です。一般的に小瓦と呼ばれます。
 
■ 窓瓦
 京町家の中は薄暗く造られています。それは夏過ごし易いようにと考えられて造られているためです。ポピュラーな町家はハシリニワと呼ばれる土間があり、おくどさん(かまど)があります。ハシリニワは見上げると吹き抜けになっていて大屋根の化粧板が見えますが、作業の明り取りにガラスの入った瓦が葺かれています。今では大手メーカーのユニット型窓のほうが安くなってしまったため造ろうとしても特注になってしまいます。現在はガラス製の瓦を使い、意匠を壊さずに採光しております。
 
■ 坪庭と瓦
 坪庭も町家に欠かせない場所のひとつといえますが、薄暗い家の中への採光と建物を長く持たせるための通気という重要な意味を持っています。現代の建築は断熱効果を重視しているため高気密になってしまっていますが住宅にとって「蒸れ」は天敵なので坪庭の吹き抜けは非常に効果的です。しかし冬は寒いというデメリットがあるので庭は京都の「おもてなしの文化」によるところが大きいかもしれません。町家さんの二階からの座敷庭は庭の緑が瓦の額からあふれているように見えます。

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